No.201 冗長性設計の基本手順:初めての人でもわかりやすいガイド

冗長性設計の基本手順:初めての人でもわかりやすいガイド

システムの可用性と信頼性を高めるためには、冗長性設計が不可欠です。

冗長性はシステムの単一障害点(SPOF: Single Point of Failure)を避けるための重要な手法です。

システム全体の信頼性と可用性を確保するための重要です。

今回は、初めて冗長性設計を実施する人に向けて、基本的な手順と冗長性の種類について詳しく解説します。

冗長性とは?

冗長性(Redundancy)とは、システムやネットワーク、データベースなどの情報技術において、予備の機能やリソースを持たせることを指します。

これにより、システムの一部が故障した場合でも、別の冗長な部分が引き続き機能を果たすことで、システム全体の可用性や信頼性が向上します。

冗長性の目的は、以下の通りです。

  1. 可用性の向上:システムが常に稼働し続けることを保証します。特に24時間365日の運用が求められるシステムでは、冗長性が不可欠です。
  2. 信頼性の向上:システムの障害やデータ損失を最小限に抑える。
  3. 継続性の確保:業務の中断を最小限に抑えるために、迅速な復旧と代替手段の確保が不可欠です。

冗長性設計の基本手順

冗長性設計の第一歩は、システムの要件定義です。

具体的には以下のステップがです。

1. 要件定義
  • システムの重要性と影響範囲の評価:システム停止が業務に与える影響を評価し、冗長性の必要性を明確にします。
  • 可用性目標の設定:システムの可用性目標(Service Level Agreement, SLA)を設定し、必要な冗長性レベルを決定します。SLAは、システムがどの程度の稼働時間を維持すべきかを定義するものであり、これに基づいて冗長性の設計を行います。
2. リソースと環境の評価

次に、現在のリソースと環境を評価します。

これには以下のステップが含まれます。

  • 現状評価:現在のシステム構成、ハードウェア、ソフトウェア、およびネットワークの状況を評価します。
  • 制約条件の確認:予算、時間、既存の技術スタック、法規制などの制約を確認します。
3. 冗長性戦略の選定

リソースと環境を評価した後、具体的な冗長性戦略を選定します。

ここでは、主要な冗長性のタイプについて説明します。

ハードウェア冗長性

  • デュアルサーバー:重要なコンポーネントに対して複数のサーバーを使用し、一方が故障しても他方がサービスを継続できるようにする。
  • RAID(Redundant Array of Independent Disks):複数のハードディスクドライブを一つの論理ユニットに統合し、データを分散して保存することで冗長性を確保します。RAIDにはRAID 0(ストライピング)、RAID 1(ミラーリング)、RAID 5(パリティ)、RAID 10(ストライピングとミラーリングの組み合わせ)などのレベルがあります。

ソフトウェア冗長性

  • データベースレプリケーション:データベースのコピーを複数の場所に保持し、一つのデータベースが障害を起こしても他のコピーからデータを取得できるようにします。
  • アプリケーションレベルの冗長性:一部が失敗した場合でも、他の部分が正常に動作し続けるように設計します。

ネットワーク冗長性

  • ネットワークパス冗長性:複数のネットワークパスを確保し、一つのパスが使用できなくなった場合でも他のパスを通じて通信を維持します。ネットワークの可用性を上げる。
  • ISP冗長性:複数のインターネットサービスプロバイダ(ISP)を使用し、一つのISPが障害を起こしても他のISPがインターネット接続を維持します。これにより、インターネット接続の継続性が確保されます。

電源冗長性

  • UPS(Uninterruptible Power Supply):停電や電圧変動からシステムを保護するために使用される無停電電源装置です。重要な機器に対してUPSを設置することで、電力供給の安定性を確保できます。
  • デュアル電源装置:サーバーやネットワーク機器に対して、複数の電源装置を利用し、一方の電源が故障しても他方が電力を供給し続けます。これにより、電力の可用性が向上します。

データ冗長性

  • バックアップ:データの定期的なバックアップを行い、障害発生時にデータを復元できるようにします。バックアップはオンサイトおよびオフサイトで保持することが推奨されます。
  • 分散ストレージ:データを複数の地理的に分散したストレージに保存し、一部のストレージが利用できなくなってもデータにアクセス可能です。クラウドストレージを利用することで、地理的冗長性を確保することができます。

設計と実装

選定した冗長性戦略に基づいて、設計と実装を行います。

具体的には以下のステップです。

  • 冗長構成の詳細な設計図を作成し、システム全体に適用する。
  • 設計図には、各コンポーネントの冗長性のレベルやフェールオーバーのプロセスを含めます。

テストと検証

フェールオーバーテスト

フェールオーバーテストは、システムが障害発生時に自動的に予備のリソースに切り替わるかどうかを確認するテストです。このテストを通じて、冗長性が正しく機能することを確認します。

具体的には以下の項目を確認します。

シミュレーションの実施:意図的に障害を発生させ、システムが正常にフェールオーバーするかを確認します。例えば、サーバーの電源を切ってみて、バックアップサーバーがサービスを引き継ぐかどうかをテストする。

自動化テスト:フェールオーバープロセスを自動化し、定期的にテストを実行することで、常にシステムの冗長性が維持されているか確認します。

負荷テスト

負荷テストは、システムが高負荷時でも正常に動作するかを確認するテストです。冗長構成が高負荷に耐えられるかを検証します。以下の手順で負荷テストを実施します:

シナリオの設定:通常の運用を超える負荷をシミュレーションします。例えば、通常のトラフィック量の2倍のトラフィックを発生させて、システムのパフォーマンスを確認します。

モニタリング:テスト中にシステムの応答時間、スループット、リソース使用率などの指標を監視します。これにより、ボトルネックや性能低下の原因を特定します。

回帰テスト

回帰テストは、システムのアップデートや変更が冗長性に影響を与えないことを確認するためのテストです。冗長性設計が導入された後も、システムの他の部分が正常に機能することを確認します。

自動テストスクリプトの作成:回帰テスト用の自動化スクリプトを作成し、システムの変更が冗長性に影響を与えないことを確認します。

定期的な実行:システムのアップデート時や定期的に回帰テストを実行し、常に冗長性が維持されていることを確認します。

ドキュメント

テスト結果の記録:各テストの結果を詳細に記録し、どの部分が問題なく機能したか、どこに改善が必要かを明確にします。

改善点の特定:テスト結果をもとに、システムの改善点を特定し、必要に応じて設計や実装を修正します。

運用マニュアルの更新:テスト結果やフェールオーバープロセスの詳細を運用マニュアルに反映させ、運用チームが正しく対応できるようにします。

まとめ

冗長性設計のテストと検証は、システムの信頼性を高めるために欠かせないステップです。

定期的にフェールオーバーテストや負荷テスト、回帰テストを実施することで、冗長性が常に期待通りに機能することを保証できます。

また、テスト結果を詳細に記録し、継続的に改善を行うことが重要です。

これにより、システムの可用性と信頼性を高い水準で維持することができます。

冗長性設計を成功させるために、これらのテストと検証のステップを確実に実行しましょう。

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